発達障害の人が働く際に悩む問題は、どう働くか。
障害を伝えるオープン就労と、伝えずに働くクローズ就労があることは知っていますが、どちらが自分にとって適しているのか分からない方は多いのではないでしょうか。
そんな当時を振り返って、これから仕事を始めようとしている、または転職しようとしている人に「クローズ就労・オープン就労のメリットデメリット」について解説します。
この記事の最後には、実際にオープン就労/クローズ就労で働いている人の、生の声も織り交ぜていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
オープン就労は障害を”伝えて”働くこと
クローズ就労は障害を”伝えずに”働くこと
オープン就労者のリアルな声【体験談】
クローズ就労者のリアルな声【体験談】
※5分ほどで読めると思います。リアルな声もあるので、参考になる部分は多いかと。自分と照らし合わせながらよむとイメージが湧きやすいと思います。
オープン就労は障害を伝えて働くこと
まず初めに雇用形態の解説をします。
オープン就労とは、自分の障害を企業に伝えたうえで就職をする雇用形態のことを言います。
条件としては障碍者手帳の所持が条件となっており、求人の探し方としては、障碍者雇用枠として応募する形ですね。
ここでオープン就労のメリット・デメリットについて解説します。
オープン就労のメリットとは?
オープン就労によるメリットを3つ解説していきます。
①勤務形態や業務内容の配慮
②支援機関による仲介
③通院や服薬のタイミングを考慮
順番に解説します。
①勤務形態や業務内容の配慮
一つ目は勤務形態や業務内容の配慮がある事です。
どういうことかというと、発達障害の特性によって苦手なことや難しいことに対して、企業側が調整してくれるということ。
- ASDの苦手な電話対応の業務を除外してもらえる
- 服薬・通院時間に合わせて勤務時間の調整ができる
これは当事者の目線でも嬉しいですね。
企業によって違いますが、苦手なことを伝えることで環境を変化させることができるという部分のメリットがあります。
自分の思うとおりになるかは分からないですが、調整してくれる姿勢があるのとないのとは全然違いますよね!
②支援機関による仲介
次に支援機関による仲介です。
支援機関とは就労移行支援サービスのように、障害者の方が働けるようにサポートしてくれる福祉サービスのこと。
内容としては、就職までのサポートを行うとともに、定着した後のアフターフォローまで行っているところまであります。
就職した後は、オープンとはいえ不安な面はたくさん出てきます。
そこで、事業所が企業と利用者の間を仲介し、働き続けてくれるフォロー体制があれば、気軽に相談できます。
働いている中で自分の特性の伝え方や、業務中の不安などを解消できると、長く働くことができそうですよね。
③通院や服薬のタイミングを考慮
発達障害を持つ人にとって、服薬や通院をする必要がある人は、考慮を受けられることがあります。
これによって「障碍者手帳が見えたらどうしよう」「薬を飲むために何回もトイレ行きづらいな」ということを防げます。
薬が切れると作業効率がガクンと下がる方からすると、こういった配慮も嬉しいですね。
オープン就労のデメリットとは?
オープン就労のデメリットは以下の3つです。
①求人が減る
②賃金が低くなりやすい
③仕事の内容が限られる
解説しますね!
①求人が減る
デメリットの1つ目としては、求人数が減ることです。
オープン就労は障害者雇用として企業に就職することになりますが、その枠が一般職に比べて少ない傾向にあります。
これは、障害者雇用率制度(企業側が2%障害を持っている方を雇用する法律)の確率から考えるとわかりやすいです。
②賃金が低くなりやすい
次に給料面で言うと、賃金が下がりやすい部分はデメリットの一つ。
やはり、一般職と比べると数十万から数百万ほど給料が下がります。
理由としては短時間での勤務OKの配慮によって、労働時間が少なくなっているからだと思われます(参考:「平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」より)
配慮してもらう分給料が落ちてしまうのは、致し方ないですね。
③仕事の内容が限られる
最後に、仕事内容が限られるという点です。
障碍者雇用で働くことによって、出来ることと出来ないことが明確になるため、異動や他部署へのキャリアアップという形が難しくなりやすいです。
企業側によって変わるので、就労移行支援事業所との相談が必要です。
クローズ就労は障害を伝えずに働くこと
反対にクローズ就労とは、企業に対して自身の障害を伝えて就職することです。
一般職的な就職と何ら変わらないので、ハローワークや転職サイト、転職エージェントなどで就職先を探します。
クローズ就労の条件などは特にありません。 メリットとデメリットは、オープン就労の逆を考えるとイメージしやすいかと思います。
クローズ就労のメリットとは?
クローズ就労のメリットはこちらの3点です。
①賃金が高い
②求人数が幅広い
③キャリアアップしやすい
順番に解説しますね。
①賃金が高い
オープン就労と比べると給料面でも高いのがクローズ就労です。
オープン就労の勤務時間配慮などがもちろんないので、残業などが手当てでつくと考えると給料が上がるのは自然な流れですね!
②求人数が幅広い
障害者雇用では範囲が限られている仕事も、クローズとなると幅広くなります。
一般職から専門職まで、幅広く選択することができます。
自分の特性にあった仕事を探すことができるのであれば、クローズであっても働きやすい環境を作ることができるかもしれません。
③キャリアアップしやすい
こちらも、障害者雇用と比べるとキャリアアップのしやすさという面はメリットです。
ただ、クローズ就労だからキャリアアップできるというわけではありません。
その分見合った能力があることで、キャリアアップの選択肢が増えるという考え方を持つといいでしょう。
クローズ就労のデメリットとは?
逆にクローズ就労のデメリットは以下の3つです。
①通院服薬が難しい
②配慮を受けにくい
③支援機関のサポートが受けられない
3つとも解説していきます。
①通院服薬が難しい
障害を伝えていないことから、通院や服薬のタイミングを掴みづらいというのが難点です。
また、障害を伝えていないことから「いつ自分の障害がバレるか分からない…」といったような不安感が大きいのは精神的に負荷になりやすいです。
ただ、ADHDのクローズ就労している方の話だと、通院服薬は避けられないもので「どう言い訳をしよう」と悩む部分でもあるみたいです。
クローズと言っても、頻繁に通院服薬が必要な方は大変かもしれません。
②配慮を受けにくい
こちらも、クローズ就労の際にひっかかる点ですね。
障害を伝えない=障害が無いと同等になり、周りと同じ仕事を同じ基準でクリアする事になります。
その際に、配慮を受けることができないとなると、特性との折り合いを自分でうまく付ける必要があります。
自分は当時クローズ就労で働いていながら「配慮は0で当然」という考えでしたが、場合によって発達障害のカミングアウトをすることもアリだったのかなと思っています。
というのも、耐えきれず辞めて伝えたときに、上司から「もっと早くいってくれればよかったのに」と言われたからです。
職場によってカミングアウトが通用するか分からないですが、最終的にどうしても辛かったときは、辞めるのを覚悟して「こういう部分が苦手で~」と言えばよかったなとも思います。
その際の発達障害のカミングアウト方法については別記事で解説しますね!
③支援機関のサポートが受けられない
最後に、支援機関のサポートが受けられないという点ですね。
オープン就労時に就労移行支援事業所を通せば、仲介してくれる場所があります。ただ、クローズだと企業と個人になるので、なかなか難しくなるのが現状。
ただ、仲介はせずにフォローしてもらう方法は1つあると思います。
それは、相談する仲間や外部でのカウンセリングサービスの利用などをするということ。
通院と同じ効果になるかはわからないですが、頼り先を外部に作ることによって、心理的なストレスは和らぐと思います。
メンタルが不安定で生きづらい発達障害の人からすると、頼り先を増やしてカバーをすることは結構大事です。
依存先を増やしてメンタルを安定させる方法はこちらで解説していますので、よろしければご覧ください。
オープン就労者のリアルな声【体験談】
実際に、オープン就労しているお客さんに僕がインタビューをしたこともあるので、載せておきます。参考になればと思います。
・障害者雇用かというイメージとリアルのギャップは少なめ
→自分ができることとできないいことは他の人も同じようにあるから
・実際障害者雇用の配慮ってあるの?
→失敗時のフォローアップの体制がある
→仕事量が調整される
・辛いことは?
→コミュニケーションの相違と負荷の多さ
・配慮による接し方の違いは?
→言い回しの調整や、伝達手段の変更(ASDで視覚優位なら文章で伝える等)が取れること
・仕事仲間全体の配慮はどう?
→少しは変わるけど、自分次第で全体に分かりやすく伝えること大事
→伝えることで「自分の接し方」を理解してもらう
→待ちの姿勢じゃなく、能動的に伝えることでお互いが働きやすい環境を作る
・障害者雇用に向いている人向いてない人
→仕事の向き合い方バリバリタイプなら自営業
→そうじゃなければ障害者雇用?
長くなってしまいましたが、配慮を受けてもらえるという部分はやっぱり助かりますね。
同時に、自分を理解してもらうにはまずは自分から積極的にアクションするという点が非常に大事になってくると思います。
待ちの姿勢では、企業側もどうやって動けばいいかわからないですかね。
お互いが働きやすい環境づくりを自分から作ることが鉄則です。
クローズ就労者のリアルな声【体験談】
クローズ就労者のリアルな声も集めてみました。ぼくの場合は、昔の経験談です。
他2名は現在もクローズで働いています。
Tさん(40代男性/ASD+ADHD)
Tさん(40代男性/ASD+ADHD):IT系の中間職をやっている方です。元々プレイヤーとしてエンジニアをやっていた時はよかったですが、管理職に昇給してから仕事内容が変わり、そこで発達障害(ASD+ADHD)が発覚→結果クローズ就労という流れです。ただ、慣れるまで根性で乗り切り、今はなんとか続けられているそう。
Bくん(20代男性/ADHD)
Bくん(20代男性/ADHD)塾講師をやっている方です。教えるのが得意で生徒からの授業の評判高い。ただ、昇給となるとマネジメント職になるので、そこで辞めるか悩んでいます。特徴的なところはADHDの特性と徹底的に向き合っているところ。忘れ物をしないミニマリストになったり、上司に思ったことを提案したりと、会社で出来るところまでスキルアップを目指しています。
あすてん(20代男性/ASD)
あすてん(20代男性/ASD):23歳の時発達障害ASDの診断を受けたまま新卒でホテルマンになる。仕事内容は夜勤業務で、電話対応から清掃、観光案内などパンパンのマルチタスク業務で4か月ほどで辞めてしまいました。クローズで夜勤だったので手取りは20万を超えてましたが、精神的に安定しないことも多かったです。辞めるときにカミングアウトしたところ「伝えてくれればよかった」と言われたので、辞めるどこかのタイミングで意を決して伝えればよかったと思っています。
上記3名を紹介しました。続けられている特徴としては、自分の特性とひたむきに向き合う力と、環境適応能力なのかなと思います。
キャリアアップなどは大きなチャンスですが、同時に特性との相性も考えないといけません。
その意識を持ちながらキャリアを考えるのがベストでしょう。
結果どうすればいいの?【長く続けれる場所を選ぶべき】
ここまで、オープン就労・クローズ就労の解説や、実際に働いてきている人の声を集めましたが、結局どうすればいいの?と思う方もいるかもしれません。
結論から言うと「長く続けられる場所を選ぶべき」だと思います。
理由としては、長く続けられる場所の方がメリットが大きいから。
これはクローズでもオープンでも共通です。
長く続けるメリットはクローズは給料面が高くなる。キャリアアップも見込める。自分の特性と向き合うことができる。
オープンは、仕事に慣れると自身がつく。精神的余裕時間的余裕が生まれる。空いた時間で新しいことに挑戦する余裕がある。といったところ。
色々と書いてきた中で、一番ダメなのは「背伸びをしすぎて長続きしないこと」です。
そして、自分はどうすればいいんだろうと転職回数を増やしてしまうと履歴書にキズも付きますし、二次障害につながる可能性があったりと、デメリットが大きい。
だったら、まずは自分が「ここなら働けるだろう」と確信の持てる仕事を選ぶことが最初のスタートとして重要かなと思います。